第1編 民法総則 第1章 民法総論 1−1 民法の基本原理    私的自治の原則:人は自らの約束(意思)に基づいてのみ拘束されるという原則  契約自由の原則 原則…私的自治(静的安全)    {修正…取引安全(動的安全) 1−2 私権行使の制限    1条  私権は公共の福祉に遵ふ  権利の行使及ひ義務の履行は信義に従ひ誠実に之を為すことを要す  権利の濫用は之を許さず  1条の2 本法は個人の尊厳と両性の本質的平等とを旨として之を解釈すへし 1.信義則(信義誠実の原則)(1条2項)  :社会共同生活の一員として、互いに相手の信頼を裏切らないように誠意を持って行動することを要求するルール  権利義務の具体化  規範の創設  法律行為の解釈基準 という機能を持つ。   派生原則 禁反言の原則(エストッペル):自己の行為に矛盾した態度をとることは許されないということ。 クリーン・ハンズの原則:自ら法を遵守する者だけが法の尊重を求めることができるということ。 事情変更の原則:契約締結時には予見できなかった事情が生じた結果、契約を元のままで維持するこ              とが公平に反する場合に、裁判所が契約の解除ないし改訂を命じることができるということ。 2.権利濫用(1条3項)   :権利を行使する際、他人の権利と衝突したときに、それを濫用的に行使することは認められないというルール  (1)権利濫用の要件   →判例)権利の行使によって生じる権利者個人の利益と相手方または社会全体に及ぼす害悪との比較衡量、という       客観的な判断基準を重視する。    四宮)主観的要素をも考慮する。  (2)権利濫用の効果    権利行使の効果が生じない。 不法行為による損害賠償の責任  権利の剥奪( 834条) 第2章 私権の主体 2−1 自然人   1.権利能力:権利・義務の主体となりうる資格  (1)権利能力の始期=出生   1条の3 私権の享有は出生に始まる   721条 胎児は損害賠償の請求権については既に生まれたるものと見做す。   886条 胎児は、相続については、既に生まれたものと見做す。 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、これを適用しない。   965条 886条の規定は、受遺者にこれを準用する。   *「胎児は既に生まれたものと見做す」ということの意味をいかに解すべきか。B    →停止条件説(通判):胎児は胎児のままでは権利能力を持たず、生きて生まれれば、不法行為の時点や相続開               始の時点に遡って権利能力を取得すると考える。よって胎児を代理することはできない。 r.現行法上、胎児の財産を管理する法定代理人制度が存在しない。 解除条件説:胎児は胎児のままで権利能力を取得し、胎児が死体で生まれれば、遡って権利能力を失うと考え           る。よって胎児を代理することは可能である。  (2)権利能力の終期=死亡   ξ死亡の証明とその証明の困難を救う制度    認定死亡…戸籍法上の制度。生存の確証により当然に効力を失う。    失踪宣告 普通失踪+特別失踪   30条  不在者の生死か7年間分明ならさる時は家庭裁判所は利害関係人の請求に因り失踪の宣告を為すことを得   戦地に臨みたる者、沈没したる船舶中に在りたる者其他死亡の原因たるへき危難に遭遇したる者の生死か       戦争の止みたる後、船舶の沈没したる後又は其他 の危難の去りたる後1年間分明ならさるとき亦同し   31条 前条第1項の規定に依り失踪の宣告を受けたる者は前条第1項の期間満了の時に死亡したるものと看做し、      前条第2項の規定に依り失踪の宣告を受けたる者は危難の去りたる時に死亡したるものと看做す   32条  失踪者の生存すること又は前条に定めたる時と異なりたる時に死亡したることの証明あるときは家庭裁判       所は本人又は利害関係人の請求に因り失踪の宣告を取消すことを要す   但失踪の宣告後其取消前に善意を以て為したる行為は其効力を変せす   失踪の宣告に因りて財産を得たる者は其取消に因りて権利を失ふも現に利益を受くる限度に於てのみ其財       産を返還する義務を負ふ   失踪宣告の取消   原則)遡及効   修正)遡及効の制限 善意の行為の有効(32 但書)  @財産取得行為  イ)失踪者からの直接権利取得者(相続人・受遺者・生命保険金受取人)は常に保護されない。  ロ)処分行為は取消に影響を受ける。   *32条1項但書の「善意」とは、当事者がともに善意であることを要するか。B    →判例)要する。r.同条項は「善意を持ってなしたる行為」のみ規定しており、これは「行為」をなす当事                 者双方にかかる。 四宮)相手方が善意であれば足りる。    r.処分行為者が悪意であっても、権利を取得する者が善意ならその処分行為は効力を失わない    と解釈することが、取引安全を保護しようとした規定の趣旨にあう。   *当事者はともに善意であったが、転得者が悪意であった場合の処理。B    →通判)悪意の転得者も権利取得を失踪者に主張できる(絶対的構成)。    r.善意である譲渡人が追奪担保責任を負うのは不当である。  A身分行為  *失踪宣告によって失踪者Aとその配偶者Bとの婚姻関係が解消したために、BがCと再婚したところ、A       が生存していることがわかり、失踪宣告が取り消された場合どうなるか。B   →通説)財産取得行為と同様に考える。両当事者が善意の場合には後婚のみが残るが、そうでない場合に           は前婚が復活して重婚状態が生じる。そして、前婚につき離婚原因(770)となり、後婚につき取           消原因(732・744)となる。    四宮)但書の適用はなく、常に後婚を有効とすべきである。 r.婚姻は当事者の意思が尊重される。 直接取得者の返還義務の範囲(32 ) *32条2項と703・704条の関係 D  →四宮)32条2項は善意の場合の返還義務の範囲について規定したものである。即ち32 =703条。  r.32条2項は不当利得についての規定であり、悪意者まで現存利益に限って保護する必要はない。   同時死亡の推定   32条の2 死亡したる数人中其1人が他の者の死亡後尚ほ生存したること分明ならさるときは此等の者は同時に死        亡したるものと推定す 2.意思能力:自己の行為の法的な結果を認識・判断することができる能力(有効に意思表示しうる能力)   →通判)法律に明文規定はないが無効。 3.行為能力:単独で確定的に有効な意思表示をなしうる能力  (1)意義   *行為無能力者が同時に意思無能力者であるとき、意思表示の効果はどうなるか。B+    →二重効肯定説(通説):いずれを主張することも許される。 r.いずれも主張しうると解するのが、無能力者保護に資する。「無効」の意味も表意者保護の観点から理解し、      無能力者の側からしか無効主張できないと解すれば、いずれを主張しても「取消」との差はなくなるから不当  ではない。   119条 無効の行為は追認に因りて其効力を生せす。但当事者か其無効なることを知りて追認を為したるときは新       なる行為を為したるものと看做す   120条 取消し得へき行為は無能力者若くは瑕疵ある意思表示を為したる者、其代理人又は承継人に限り之を取消   すことを得   121条 取消したる行為は初より無効なりしものと看做す。   但無能力者は其行為に因りて現に利益を受くる限度に於て償還の義務を負ふ   122条 取消し得へき行為は第120条に掲けたる者か之を追認したるときは初より有効なりしものと看做す   但第三者の権利を害することを得す   123条 取消し得へき行為の相手方か確定せる場合に於て其取消又は追認は相手方に対する意思表示に依りて之を   為す   124条  追認は取消の原因たる情況の止みたる後之を為すに非されは其効なし    禁治産者か能力を回復したる後其行為を了知したるときは其了知したる後に非されは追認を為すことを   得す    前2項の規定は法定代理人か追認を為す場合には之を適用せす   125条 前条の規定に依り追認を為すことを得る時より後取消し得へき行為に付き左の事実ありたるときは追認を       為したるものと看做す。但異議を留めたるときは此限に在らす   1.全部又は一部の履行 2.履行の請求 3.更改 4.担保の供与   5.取消し得へき行為に因りて取得したる権利の全部又は一部の譲渡 6.強制執行   126条 取消権は追認を為すことを得る時より5年間之を行はさるときは時効に因りて消滅す。   行為の時より20年を経過したるとき亦同し    代理権 同意権    追認権 取消権    未成年者     ‐   ‐    ×124 ○120 ・    ○818   ○4    ○122 ○120    禁治産者     ‐   ‐    ×124 ○120     ○8/838   ×    ○122 ○120    準禁治産者    ‐   ‐    ×124 ○120     ×   ○12    ○     ○  (2)未成年者   3条 満20年を以て成年とす   4条  未成年者か法律行為を為すには其法定代理人の同意を得ることを要す   但単に権利を得又は義務を免るへき行為は此限に在らす  前項の規定に反する行為は之を取消すことを得  5条 法定代理人か目的を定めて処分を許したる財産は其目的の範囲内に於て未成年者随意に之を処分することを      得 目的を定めすして処分を許したる財産を処分する亦同し  6条  一種又は数種の営業を許されたる未成年者は其営業に関しては成年者と同一の能力を有す   前項の場合に於て未成年者か未た其営業に堪へさる事跡あるときは其法定代理人は親族編の規定に従ひ其       許可を取消し又は之を制限することを得   ξ未成年者が法律行為をする際にその法定代理人の同意が不要な場合(4条)    @単に権利を得たり、義務を免れるべき行為 ex.贈与を受ける、書面によらざる贈与の取消、債務の免除    A目的を定めて処分を許した財産の目的内での処分、目的を定めずに処分を許した財産の処分。    B一種または数種の営業を許された場合    C取消(120条)  (3)禁治産者  7条 心神喪失の常況に在る者に付ては家庭裁判所は本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、保佐人又は検察官      の請求に因り禁治産の宣告を為すことを得  8条 禁治産者は之を後見に付す   9条 禁治産者の行為は之を取消すことを得   10条 禁治産の原因止みたるときは家庭裁判所は第7条に掲けたる者の請求に因り其宣告を取消すことを要す  (4)準禁治産者   11条 心神耗弱者及ひ浪費者は準禁治産者として之に保佐人を附することを得   12条  準禁治産者か左に掲けたる行為を為すには其保佐人の同意を得ることを要す   1.元本を領収し又は之を利用すること 2.借財又は保証を為すこと   3.不動産又は重要なる動産に関する権利の得喪を目的とする行為を為すこと 4.訴訟行為を為すこと   5.贈与、和解又は仲裁契約を為すこと 6.相続を承認し又は之を抛棄すること   7.贈与若くは遺贈を拒絶し又は負担附の贈与若くは遺贈を受諾すること    8.新築、改築、増築又は大修繕を為すこと 9.第602条に定めたる期間を超ゆる賃貸借を為すこと   家庭裁判所は場合に依り準禁治産者か前項に掲けさる行為を為すにも亦其保佐人の同意あることを要する       旨を宣告することを得   前2項の規定に反する行為は之を取消すことを得  13条 第7条及ひ第10条の規定は準禁治産に之を準用す   *準禁治産者が保佐人の同意なく12条の列挙行為をなした場合、保佐人は追認できるか。B    →通判)できる。r.追認は言わば事後の同意であり、保佐人の同意は、事前であっても事後であっても本人の保             護からは異ならない以上、認めるべきである。   *保佐人は準禁治産者の行為を取り消すことができるか。B    →判例)できない。r.120条は取消権者として保佐人を挙げていない。契約が履行されている場合には給付した              財産の返還を請求し、未履行の場合には取消の抗弁を提出する必要があるが、保佐人はこ のような行為を代理する権限はなく、保佐人に取消権を認めても実効性がない。 我妻)できる。r.保佐人の事前の同意権を無視して準禁治産者が契約をした場合など、保佐人による取消権を             認めなければ、同意権は実効性を欠いてしまう。  (5)無能力者の相手方保護の制度   @法定追認(125)   A取消権の短期消滅時効(126)   B相手方の催告権(19)   19条  無能力者の相手方は其無能力者か能力者と為りたる後之に対して1カ月以上の期間内に其取消し得へき行       為を追認するや否やを確答すへき旨を催告することを得。若し無能力者か其期間内に確答を発せさるとき   は其行為を追認したるものと看做す  無能力者か未た能力者とならさる時に於て法定代理人に対し其権限内の行為に付き前項の催告を為すも其   期間内に確答を発せさるとき亦同し   特別の方式を要する行為に付ては右の期間内に其方式を践みたる通知を発せさるときは之を取消したるも   のと看做す   準禁治産者に対しては第1項の期間内に保佐人の同意を得て其行為を追認すへき旨を催告することを得   若し準禁治産者か其期間内に右の同意を得たる通知を発せさるときは之を取消したるものと看做す    本人に催告    保護者に催告    未成年者 禁治産者 準禁治産者 親権者 保佐人 後見人    本人が無能力である間  催告無効 催告無効 取消    追認  追認  追認    本人の能力取得・回復後 追認 追認  追認 とみなされる。     C無能力者の詐術による取消権の否定   20条 無能力者か能力者たることを信せしむる為め詐術を用ゐたるときは其行為を取消すことを得す    *「詐術」とは。 →判例)無能力者が能力者であることを誤信させるために、相手方に対して積極的に詐術を用いた場合のみな     らず、無能力者であることを黙秘していた場合でも、それが無能力者のほかの言動などとあいまって 相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときもこれに当たる。    r.単に黙秘していたような場合であっても、このような事情のある場合には、無能力者が能力者である     ことを誤信させたと評価できる。  (6)第三者の保護  @不動産の場合 イ)取消前の第三者→保護されない。 ロ)取消後の第三者→177条(判例)、94条2項類推適用で保護される。    A動産の場合 イ)取消前の第三者→善意取得(192条)で保護される。 ロ)取消後の第三者→善意取得(192条)で保護される。 2−2 法人   1.法人総論  (1)意義   法人:自然人以外のもので、法律上、権利義務の主体たりうるもの。    法人法定主義:法人の設立は法律の規定によってのみ認められる。(33)   法人設立の諸主義 具体例  法人を認める基準  趣旨    特許主義 日本銀行 特別の法律の制定を必要とする。    強制主義 弁護士会 国家が法人の設立・介入を強制    許可主義 民法上の 主務官庁の自由裁量に委ねる。  公益の美名に隠れて不当なことがなされるのを防ぐ。 公益法人    認可主義 生協  法律の定める要件を具備し、主務 要件を具備していれば必ず認可しなければならない。 宗教法人 官庁の認可を受けること。  法人の設立を許可主義よりも自由にする。    準則主義 会社  法律の定める一定の組織を具備し 法人の設立を認可主義より一層自由にする。 労働組合 た場合に当然に法人となる。  (2)法人の種類    社団法人‥人の集まりが法人となったもの。   {財団法人‥財産の集合体    公益法人‥祭祀、宗教、慈善、学術、技芸、その他公益に関する社団・財団であって、営利を目的としないもの   {営利法人‥営利事業を目的とする法人  (3)法人が設立された場合の効果    団体は構成員から独立した権利能力の主体として、契約の当事者になることができる。    契約から生じた債権・債務はその団体にのみ直接帰属する。    団体は、不動産などを取得すれば、自らの名前で登記して対抗要件を備えることができる。  (4)法人の本質   *法人の本質は何か。B+    →法人擬制説:法人は法律の力によって権利の主体を擬制されたものである。 法人否認説:法人格は法の外被にすぎず、法人の実体は現実には個人または財産以外には存在しない。 法人実在説(通説):法人は擬制ではなく、実質的に法的主体たりうる実体を有する一つの社会的実在である。   法人擬制説   法人実在説 法人   擬制に過ぎない   実在するもの 法人と理事の関係  代理関係   代表関係   法人は理事によって権利義務を取得する。 理事は法人の手足 理事の不法行為責任 肯定   否定 r.理事は法人の手足に過ぎない。 理事自身の占有   認める。   認めない。r.法人の手足に過ぎない。 法人の行為能力   目的として掲げられた行為に限られる。  目的として掲げられた行為に限られない。 44条の規定   創設規定 r.本来法人の行為は存在しない。注意規定 r.本来法人の行為は存在する。   代位責任 715条の責任と同様。   自己責任 715条の責任と異なる。 2.権利能力なき社団  (1)意義:実質的には法人格のある団体と同じような活動をしているが、法人とはなっていない団体  (2)成立要件 団体としての組織を有すること  多数決原理によって団体の意思決定が行なわれること  構成員の変更にもかかわらず、団体そのものが存続すること 代表の方法、総会の運営、財産管理、その他団体としての主要な点が確定していること  (3)効果       内部関係…社団法人や組合の内部関係に関する規定を適用する。 {対外関係…財産関係(権利関係・債務の帰属)が問題となる。  (4)権利能力なき社団の財産関係   @権利関係  総有(個々の持分も観念できないような共同所有) 民法上の共同所有形態    具体例  使用・収益 潜在的持分(払戻) 具体的持分 持分の処分 分割の請求 共有 共同相続した財産    ○  ○   ○    ○  ○ 合有 組合の財産    ○  ○   ×    ×  × 総有 社団の財産    ○  ×   ×    ×  ×     A登記方法    *権利能力なき社団財産の登記はどのようにしてするか。 →判例実務)代表者の個人名義で登記するか、そうでなければ全員の共有名義で登記する。  r.権利能力なき社団名義で登記を認めてしまうと、主務官庁の証明書も印鑑証明もない状況では、     脱税や強制執行を免れるための脱法的な虚無人名義の登記が発生する恐れがある。  通説)肩書き付き代表者名の登記を認めるべきである。   B債務    *権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引によって生じた債務は誰に帰属するか。また、債権者     は構成員の個人財産にかかっていけるか。B+ →判例)権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引の債務は、その社団の構成員全員に一個の義     務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取 引の相手方に対し、直接には個人的債務・責任を負わない。    *権利能力なき社団の代表者は個人責任を負うか。B →通判)負わない。r.法人・組合の代表者とパラレルに考えうる。代理人も本人の債務に付き個人責任を負う   ことはないのと同様である。取引安全は代表者を保証人にするなどで対応しうる。 3.法人の組織   機関 社員総会・理事・監事   理事の権限=包括的代理権   53条 理事は総て法人の事務に付き法人を代表す。但定款の規定又は寄附行為の趣旨に違反することを得す。  又社団法人に在りては総会の決議に従ふことを要す  54条 理事の代理権に加へたる制限は之を以て善意[無過失不要]の第三者に対抗することを得す   57条 法人と理事との利益相反する事項に付ては理事は代理権を有せす。此場合に於ては前条の規定に依りて特別  代理人を選任することを要す [利益相反取引=108条]   *定款による代理権の制限については悪意であったが、定款の要件を満たしていると信じた善意無過失の相手方。    →通判)54条ではなく110条で保護する。r.包括的代表権ではなく個別的代表権への信頼だから。   *代表権の範囲内でありながら代表権を濫用する場合の処理    →93条但書類推適用説(通判)‥相手方が善意無過失ならば、相手方は保護される。 信義則説‥相手方が善意無重過失ならば、相手方は保護される。 4.法人の能力  ζ権利能力   @性質による制限 婚姻・年齢などの権利義務は享有できない。   A法令による制限 会社は他の会社の無限責任社員になることができない(商法55条)   B目的による制限    43条 法人は法令の規定に従ひ定款又は寄附行為に因りて定まりたる目的の範囲内に於て権利を有し義務を負ふ   *43条は、何を制限した規定か。A    →権利能力制限説(通判):43条は、法人の権利能力・行為能力双方を制限した規定である。    r.法人は目的の範囲内においてのみ法律上存在を認められるので、その範囲においてのみ権利能力を有     する(起草者の見解)。法人は一定の目的のために存在し、その範囲内で行為をするから、行為能力 をも制限する。    c.目的の範囲外の行為については権利能力を有しないとすると、理事が目的の範囲外の行為をなした場     合にはその行為は無効ということになり、取引の安全を害する。 →cc.「目的の範囲」を柔軟に解釈することにより回避しうる。    c.43条が目的の範囲による権利能力の制限を認めたものであるとすると、法人の不法行為責任を認める     44条1項との関係で、不法行為をなすことも目的の範囲内ということになってしまう。 行為能力制限説:43条は、法人の行為能力を制限した規定である。    r.法人の目的によって制限されるのは行為の範囲である。 代表権制限説(四宮):43条は、法人の理事の代表権(代理権)を制限した規定である。    r.43条は理事の目的外行為から法人の財産を守るための制限であり、理事の目的外行為を絶対的な無     効とする必要はなく、効果不帰属という意味の無効と解すれば足りる。    「目的ノ範囲」の制限対象 「目的ノ範囲」を超えた場合 趣旨    権利能力制限説 法人の権利能力    絶対的無効.追認の余地なし 法人の構成員を保護    代表権制限説  理事の代表権    無権代理効果不帰属.表見代理・追認の余地 取引の相手方を保護   *「目的の範囲内の行為」とは。    →判例) 定款に明示された目的 目的遂行に必要な行為(行為の客観的性質に即して抽象的に判断する) 四宮) その法人が営利法人であるか否か(営利法人ならば目的による制限を無視する) 非営利法人であれ     ば問題の行為が総社員の利益や法人財産の維持にとってプラスになるか否か  無効とすることが取引     の安全を害しないか  当事者間の公平信義に反しないかを考慮して決すべきである。 5.法人の不法行為   44条  法人は理事其他の代理人か其職務を行ふに付き他人に加へたる損害を賠償する責に任す   法人の目的の範囲内に在らさる行為に因りて他人に損害を加へたるときは其事項の議決を賛成したる社員、   理事及ひ之を履行したる理事其他の代理人連帯して其賠償の責に任す  (1)意義    報償責任の原理‥法人は従業員や理事などによって利益を得ているのでありその分責任も負担すべきである。   *44条による責任の性質    →法人実在説‥「法人自体の不法行為」が考えられる。自己責任 法人擬制説‥「他人の行為についての責任」を認めたものと考える。代位責任   *44条と715条の関係    →法人の理事が不法行為をした場合は44条、法人の従業員が不法行為をした場合は715条で処理する。   *44条と110条の関係    公法人の機関が予算外借り入れをするときは法令によって議会の議決が要求されているにもかかわらず、それを    得ないで借り入れを行なってしまった場合の処理。54条は法令による制限の場合適用されないため、問題となる。    相手方は44条によっても110条の類推適用によっても保護しうるように思われるがどちらが優先されるか。    →110条が優先適用される。r.一般に取引行為としての効力を維持したほうが当事者の合理的意思に合致する。  (2)要件 「理事その他の代理人」の行為であること その行為が不法行為の要件を備えていること 「その職務を行なうにつき」損害を加えたこと イ)外形理論…理事の行為が外形上から見てその職務に属すると認められる行為かどうかで判断する。 ロ)理事の行為が外形上職務行為に属すると認められるときでも、理事の具体的行為がその職務に属さないこ   とについて相手方が悪意重過失のときは法人は責任を負わない。(判例)  (3)効果…法人は損害賠償義務を負う。   *法人の理事が不法行為をして法人が責任を負うときに、理事個人、機関個人も責任を負うか。    →理事も責任を負う。r.法人実在説からは、法人自身の不法行為と考えるので形式的には理事個人は責任を負わ   ないようにも思えるが、理事の行為は理事の個人たる行為の側面と法人の機関たる行為   の側面と2通りの側面があると考え、前者の側面から責任を認める。 第3章 私権の客体 3−1 物    第85条  本法に於て物とは有体物を謂ふ  第86条  土地及ひ其定著物は之を不動産とす 此他の物は総て之を動産とす  無記名債権は之を動産と看做す   第87条  物の所有者か其物の常用に供する為め自己の所有に属する他の物を以て之に附属せしめたるときは其附属   せしめたる物を従物とす   従物は、主物の処分に随ふ  第88条  物の用方に従ひ収取する産出物を天然果実とす   物の使用の対価として受くへき金銭其他の物を法定果実とす  第89条  天然果実は其元物より分離する時に之を収取する権利を有する者に属す   法定果実は之を収取する権利の存続期間日割を以て之を取得す    不動産…土地およびその定着物(ex.立木)   {動産…不動産以外の物   従物…独立の物でありながら、客観的・経済的には他の物(主物)に従属して、その効用を助ける物   継続的に主物の効用を助けること    主物に付属すると認められる程度の場所的関係にあること   *主物と同一の所有者に属すること    独立性を有すること (ex.独立性を有しない−石垣・砂利)   *主物・従物ともに同一の所有者に属することが必要か。B    →通説)必要。r.民法の明文(87条) 我妻説)不要。r.たとえ他人のものであれ、主物の経済的効用を増加させている。